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つぶやき19本目

「祭りから『生活』へ…」

かつては、神になりたい、と願ったものだ。
僕が演劇(役者)を始めたのは、他者になりたかったからです。
とにかく自分以外の誰かになりたかった。
よくある理由だと思う。
だけど僕のなかでは、自分以外の誰か、その最高の他者として“神”になれるという予感がありました。
ハイユウとは、ヒト(人)にアラ(非)ずスグ(優)れる、またはヒト(人)をウレ(憂)うと書いて俳優である、この事実も、僕が人間を超越することを信じさせました。
確かに、僕には神になるという密かな願いがあったのです。
それは不可能な願いだという自覚はありましたが、にもかかわらず、否だからこそ、僕は夢中なのでした。
これはすでに悲劇的な欲望だったとも言えますが、これは別に珍しいことではなく、時として人はそんな欲望をもつということだと思います。

では当時、僕はどんなことをしていたろうか?
世の中は小劇場ブームと言われた頃で、御多分に漏れず、僕も片田舎(学生・アマチュアでした)でその狂騒に身を投じたわけです。
それは時代の空気を反映した終末感と笑いを特徴として(「明るい虚無」などと言われた)、賑やかで、自由さに溢れ、また見掛けによらず切実さのある演劇ブームでしたし、先の僕の欲望を満たしてくれそうにも思えました。
その舞台は、祭りでした。
さて、ブームの是非はともかく、そこで僕のやっていたことは、ひたすら人真似の演技、どこかで観たよな演技を繋ぎ合わせることだったと言えます。
そうしたなかで、僕は二つの背反する経験をすることになりました。
一つは、“誰にでもなれる”という全能感の経験。
舞台でのそれは、ドーパミン出まくりで、何らかのインスピレーションと共に自分など無にしてしまう陶酔体験であり、その時には、或いは自分は神に近いと思ったものです。
けれど正直にいえば、それは実際の舞台でよりも、むしろ観念の世界で多く経験されたと言うべきでしょう。
普段の物思いでこそ“俳優は誰にでもなれる”という全能感は強くやって来たのです。
また、全能感には何故か“救われない”感覚、もしくは“断絶”の感覚がセットになっていて、全能感を補強する役割を果たしていましたが、ここには小劇場ブームの内包する気分が影響していたとだけ指摘しておきたいと思います。
次にもう一つの経験。
“自分でしかありえない”という諦めの経験です。
この前者と反対する感情は、主に演技をするなかで、だんだんと感じられてきたことです。
演じれば演じるほど、他者をめざして自分を相対化すればするほど、ヒョッコリ顔を出す自分というものがあったのです。
僕の目的からすれば、そいつは邪魔者であり、臆病さであり、限界であり、つまり敗北なのでしたが、しかし不思議と惨めさはありませんでした。
僕はただ諦め、受け入れた。
もっと言えば、“自分でしかありえない”という諦めの内から、なにか“根拠”の感覚のようなものを与えられていたのです。
さて、こうして僕の超越の企みは、背反する二つの経験をもたらしたわけですが、僕はどちらかといえば後者の、いわば失敗の方により深い意味を見出すようになりました。
もちろん、僕にある種の才能があり、自分を完全に騙しおおせるほど強ければ、今頃は“虚無の王”ともいうべき神になれたのかも知れませんが、そんなモノにはなれないし、なりたくもないと結局は考えたのだろうと思います。
本当のところ、僕が小劇場ブームという祭りのなかで夢見た超越とは、何だったのでしょうか。
それは、いわば縦への超越だったと言えるでしょう。
今でも、その縦への超越自体には罪は無い(有効)だと思うのですが、当時の僕にはその為に必要な梯子が決定的に欠けていました。
やり方を、何処かひどく間違えていたのである。
僕は敗れました。

そして時は流れました。
かつての超越の欲望も消えて無くなってしまった、という風には、しかし成りませんでした。
それは少し形を変えて、今も僕のなかにあるのです。
祭りは、非日常としての「生活」へと場所を変えました。つまり、東京ノーウ゛イレパートリーシアターでの活動です。
ここでも僕は、変わらず他者になりたい(これがすでに超越です)と願って、俳優を続けている次第です。
しかし、それはもはや神になるのを予感するからではなくなっています。
僕は自分自身に至る、さらには「人間」へと至るのを予感して、これを期待しているのです。
いわば横への超越です。
これでは他者になりたかった男のパラドックスですが、俳優とはそういうものだと今では考えているわけです。

ペンギン
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