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パンドラ 3/4

 Ⅲ 幽霊ども

芝居はとうに終わっていた
私は客席にひとり残されていた
私が最後の耳であり目であった
舞台には呆けた沈黙 救えぬ闇

芝居はとうに終わっていたのだ
音楽の旋律も 役者たちの面影も
もはや想い出されない
いまや憂鬱 退屈 遣りきれない

終わった 終わった 終わっていた
寒い 狭い客席には
虚空に虚空をみつけるばかりの
私の亡骸ばかりが残されていた

ホラ見ていれば 底なしの無明が口ひらき
名もない 打ち捨てられた みじめなものら
お互いが幽霊である幽霊どもが
おいでおいでをしてるじゃないか

さては私のお仲間か てもなく愚かに眠ろうか
絶えて交感せず 孤立したものら
かつて所有されず かつて存在しないものら
無力な幽霊どもの つまらぬ芝居だ

芝居はとうに終わっていたのに
私はなおもここにいて 虚空に
ああ 何も見はしなかったしなかった
私はおもむろ席を立つ 拍手はしない
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パンドラ 2/4

 Ⅱ 池

あるとき俺は池だった
深くて 冷えた池だった
そのなかで宝石が眼を開く
――彼女は殺されて帰ってくる
――俺にはそれが解っている

俺は瞼を開けている
そこにお前は飛び込める
そこには闇があるだろう
――不可思議な気持ちを溶かすがいい
――誰が誰か知らないでいい

奇異なる魚が群れなし泳ぐ
お前のまわりを親しくめぐる
お前をつつき こう告げる
――ヨク来タネ ヨク来タネ ヨク来タネ
――ケレド 死ンダモノ ハ 早ク 去レ

池は静かに蒸発した
池は 沸騰する涙であった
そのなかで宝石が眼を閉じた

パンドラ 1/4

 Ⅰ 青空

箱の中で夢をみた
遠く 青空光っている
あれは俺の青空だろうか
あの日 殺した青空だろうか

俺の触手がゆらゆら伸びる
やさしい触手がゆらゆら伸びる
乱反射する陽光に
うつくしい人が笑まいした

華麗なピアノの鳴り渡り
まぼろしの人が笑まいした
あの日 空の落ちるまで
あの日 空の落ちるまで

遠く 青空光っている
ただ一点をみつめている
あれは何のことはない
あれは 俺の青空じゃない

さよなら青空
俺の触手は青空を探る
けれど 青空もういない
空落ちて 地上に人の影もない
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